2009年8月より相談活動を開始した第34期生の方に
「いのちの電話を取り始めて」と題して書いていただきました。
◆ A.H
「はい いのちの電話です。」
初めて電話をうけたときのことを今でも鮮明に覚えている。あまりの緊張のため、声は裏返り、手は少々震え、頭の中は真っ白になっていた。顔も見たことがない、会ったこともない、見ず知らずの人と会話することが、これ程までに難しいものとは思いも寄らなかった。その難しさは、自分が想像していたよりも遥かに超えていた。
相談の電話を受けるなかでも相談の内容によっては自分が相談者の訴える話を聴けないことがある。頭では、相手の話を聴きたいという気持ちはあるのに、心がついていかないのだ。このような相談を受けたときは、心身共に非常に疲れ切ってしまう。相談者の話を聴きたい気持ちとどうしても聴けない自分の揺れる気持ちの間で、ここらが板挟みになってしまうからである。
相談者が相談のなかで感情を露にするのと同じように、電話を受ける者にもさまざまな感情が湧き上がってくる。私は、これからも相談を受けていくなかで自分の感情に悩まされるだろう。自分のこころと向き合い、試行錯誤しながら、電話をかけてこられた方の悩みや抱えている問題を十分に傾聴し、相手の気持ちに寄り添う姿勢をいつまでも忘れずに持ち続けていきたいと思う。
◆ S.T
私がいのちの電話の相談員を目指そうと思ったのは、心理学を多く学んできた大学の卒業が間近になった頃から、心についての学びをもっと深めたいと思っていろいろ探していた時に、この電話のことを知人から紹介されたことからでした。もう一つは、私が社会人になった時から母が常々私に「あなたは多くの人の援助のおかげでここまで来れているよね。だから、今度はあなたができるなにかで社会の皆様に恩返しをするボランティアをしていきなさい。」と言ってくれていたことでした。視覚障害のある私をいのちの電話は受け入れてくれるだろうかと不安に思いましたが、事務局の方はとても親切に応対してくださり、研修期間から現在に至るまで温かい援助の手をさしのべてくださっています。34期の同期生の方々もとても親切にしてくださり、皆様のおかげで研修が続けられております。この場をお借りして、心から感謝申し上げます。
座学による研修の時もそうでしたが、実際に電話を取り始めてからも、私は毎回多くのことを学び、発見し、気づき、世界が広がっていくのを感じております。落ち込む時もありますが、心が癒されたり、ポカポカと温かくなることがあるのも、とても不思議です。悩み苦しみ、孤独を抱えている人のなんと多いことか、そして相談者に寄り添ってお話を聞くことがとても難しいことを実感しています。毎回試行錯誤の繰り返しですが、相談者が少しでも心を開いてお話ができるよう、一期一会の精神で電話を取りたいと思っております。
◆ A.I
あっという間の半年だった。モニターで聴くのと実際に取るのは全く違う、誰も助けてくれず一人だからだ。毎回受話器を握る手に力が入り、血圧が上がる気がする。
人間関係で悩み出口が見えなかった頃、たまたま目にしたのが「ボランティア募集」の記事だった。周囲の支えもあり悩みが小さくなり、俊巡する自分を変えたいと思った。少しでも誰かのために動くことで恩返しができるとよいと思った。幸い、家族も推薦文を書いてくれた友も背中を押してくれた。はじめ書いた自分史は、客観的に自分を見つめるよい機会になった。自分は本当に一人で生きてきたのではなく、周囲の愛情に支えられていたおだと改めて感じた。
今また、心やさしい同期や迷った時に支えてくださる先輩方、的確な助言を下さるスーパーバイザーの先生方に支えられながら、毎回相談者のお話に耳を傾けている。
そして時には相談者と一緒に悩んでいる。私が一生懸命お話を伺っていることが伝わっていれば幸いだ。
まだまだ半人前だが、これから研修など出来る限り参加して、早く自然体で受話器を握れるようになりたい。一人でも多くの方に「いのちの電話」があってよかった、と思っていただけるよう努めたい
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